DWG互換CAD の 新バージョンメモ:BricsCAD V22、IJCAD 2021

DWG 互換 CAD 各社から、2021年にリリースされるバージョンが出たので 2021年11月時点での IJCAD と BricsCAD の新バージョンについてまとめときます。

前バージョンからの強化内容をざっくりまとめると以下のようになるかと思います。
 

BricsCAD V22(2021年10月リリース)日本語版は11月

  • カラーブック対応。(色のデータ互換で問題になる点がなくなった。)
  • ごく一部の AutoCAD Mechanical データが正しく扱えるようになった。
    (プロキシやブロックだったものが一応 AutoCAD Mechanical オブジェクトとして扱えるようになっていますが、データ互換で補助的に扱えるといった形で相互運用を考えられる Lv ではないけど、ACM→BCM への一歩通行で考えれば期待は持てる感じ。)
  • V21 のアップデートで追加された パラメトリックブロック(ダイナミックブロックの3D込み版みたいなやつ)が安定してきた。
  • V21 中のアップデート含め V22 までの間も細かすぎて伝わらない系の改修がしこたま 。(リグレッション対応も結構あるけど、基礎的な部分は内容がだいぶ細かくなってきてるので枯れてきた感が出てきてる。API系の改善が多いのも特徴的かもしれません。)
  • 3D はソリューション系の機能が引き続き強化&追加中という感じ。BIM 系の強化が多め。 
  • GUI のベースを WXWidgets から QT 利用に移行している模様。そのせいかあれ?っていう挙動がちらほら見受けられます。
 

IJCAD 2021(2021年5月リリース)

  • ダークモードの UI に正式対応。
  • サーフェス オブジェクトに対応。(これに絡んだ機能が諸々追加。)
  • 点群ファイル(.rcp / .rcs)の表示に対応。
  • マルチテキストの対応書式強化。(番号付きリストとか未対応だったものに対応。)
  • ツールパレットの強化(ハッチングとか区切りが入れられるようになった)。
  • フィールドでシートセット情報が(一応ちゃんと)取れるようになった。
  • 高解像度環境時の UI 対応がほんの少し良くなった。
  • パフォーマンスは前バージョンから特筆すべき差はないけど、ネットワーク越しのファイル走査が一部最適化されようなのでこれに絡んでどちゃくそ遅かったのがなくなった人がいるかも。
  • 全ての IJCAD製品が"初年度だけ"サブス必須化。
    (ネットワーク版は既に毎年のサブス必須状態。)
 
で、それぞれ細かい所の所感。
 
 BricsCAD は 3D系の大きな機能開発の他に、細かすぎて伝わらない系の細々した改修が積極的に行われていますね。それだけ不具合が多いともとれますが、新機能の不具合なんかも割と早く改善されている感じで開発のサイクルがうまく回っている印象です。
(GizmoTools 絡みで API のアンドキュメントな挙動について報告したら1週間程度で改修の回答があったので対応早かった。V22 で直ってる記述 "SR130260" を確認。)
 V21 で追加されたパラメトリックブロックがダイナミックブロックの上位機能として利用促進されているようなので、"AutoCAD と相互交換可能なダイナミックブロックを作る"ことは今後もできなさそうですが、使う分には問題ないレベルになってきていると考えます。
 その他、日本向けの JGD2000 CRS 対応や、BIM, CIM, メカのソリューション系機能の拡充など、DWGファイルを軸とした別ソフトという色合いが強まってきていますね。
 BricsCAD の独自機能を活用していこうとすると、DWGファイルだけど他 CAD と互換が取れない部分が出てくる感じで進んでいるので、そろそろ AutoCAD と BricsCAD どっちと心中する?的な判断を迫られるケースが出てきそうです。
細かな状況把握はリリースノートにまとまっているのでそれを見ればいいと思います
本国主催のイベントは終わってますが、日本の代理店のオンラインイベントが11月後半にあるようなので暇な人は見たらいいかも

 
 次に IJCAD ですが、細々した未対応部分の強化や不具合修正ですね。ツールパレットの強化は、AutoCAD の同機能とかなり近いレベルになったので使い勝手的に嬉しい人もいるのではないかと思います。機能面でまだ未対応な部分の大きいなところとしては、拘束系(ダイナミックブロック含む)、3D系(画角表示や光源、アニメーションなど)、マップ系(GEOなんちゃらのコマンド)、DB系になるかと思います。
 3D系の機能は、基本的なところが弱すぎておまけレベルなのは変わらずですが、サーフェスと点群ファイルに対応したので、基礎的なデータ互換と使い手は若干上がってるといえます。(面から固体(ソリッド)への変換ができるようになったのはでかい。)
 
 移行の苦労が低めなのは上記の2製品であるのは間違いないですが、その他の DWG互換CAD もそれなりに開発が進んでいて、上記2製品が元にしていた IntelliCAD は、機能やパフォーマンス的には2製品の数年遅れレベルではありますが、データ互換的には AutoCAD 2009 以前の使い方でデータ容量がバカでかくないレベルであればそれなりに使える感じになっていたりしますので、なにげにユーザ側の選択肢は増えてます。

 
 傾向は IJCAD=ACAD 追従型(3Dはおまけ)、BricsCAD=独自進化型(データ的にも)で特に大きな変化はない( 以前の記事も見るといいかも)ので、いつか AutoCADに戻るかもっていう人は IJCAD、ぜってぇAutoCAD には戻らない!っていう人は BricsCAD という選択で考えるとある意味シンプルかもしれません。
 
 
 日本においては AutoCAD R版が LT価格で販売されて ソリューション込みがお値段そのままで AutoCAD Plus という形態になるという、結構インパクトのある戦略が実施されり、Flex ライセンスという(autodesk の製品全般が対象になる)囲い込み型だけどある程度融通の聞くライセンスが出たりと費用対効果面で変化があったので、互換CAD勢は勢いに若干ブレーキが掛かっているかと思いますが、2D CAD は総じてレガシーの時代に入ってきてると思うので、2D 図面は極力安く手間とお金を掛けずに描ければ OK。みたいな方向で進むと思ったりしてますので、互換CADがそれなりの品質になっている以上、ランニングコストが安い方に流れるのは変わらないかなと思います。
 
 2D CAD の市場自体は、2025年位までは今のプレイヤーのパワーバランスがそれほど変わらずに外的要因で縮小していくスピードが変わるだけかなと考えていたのですが、外的要因となる COVID-19 がでかすぎて確実に数年早まったなと感じています。
 
 AutoCAD でも 互換CADでも汎用CADは、ベースとして効率化を図るカスタマイズができないと価値がないというのが個人的なスタンスなのですが、汎用のくせにカスタマイズ性が乏しい AutoCAD LT を日本だけとはいえ市場から消せたという、そもそも互換 CAD に手を出した目的の一つが達成されたので内心喜んでたりします。
 
 ということで AuroCAD / BricsCAD / IJCAD(LT除く) でカスタマイズ性をお気軽に活用できる GizmoTools 使っときましょう。 あ、BricsCAD V22 にも対応一応できてますが、11月に大きめの更新アップデート出す予定です。
 
 さて、個人的に食い扶持としての 2D CAD の仕事は今年で(いくつかの例外を除いて)終わりにする事にしたので、DWG互換CAD の新バージョンのメモ記事はこれで最後になると思います。GizmoTools は放置気味でバージョン追従とか最低限の維持だけはするつもりなので、それにからめて暇だったら書くかもしれませんけど。
 
 あとは、autodesk さんが 3D製品のおまけとして AutoCAD を無償でつける(ように見える)レベルになるまでに互換CADメーカーがどこまでユーザを取り込めるかというところでウォッチするくらいになるかなぁと思ってたりします。


元ネタ:IJCADBricsys 

2021-10-30

AutoCAD Bricscad DWG DXF gizmotools IJCAD LISP

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DWG系 CAD チョットワカル。 CAD歴は AutoCAD R13~, IntelliCAD系 4~(BricsCAD含む), AresCAD (PowerCAD時代から),その他 JW_CAD とか国産CAD系諸々。 ブログではCADとCGに関する情報で気になったものをメモ的に取り上げます。 wiki.gz-labs.net / 書籍 / GizmoTools /twitter

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