DWG 互換 CAD 各社から、2022年にリリースされるバージョンが出たので 2022年11月時点での BricsCAD とIJCAD の新バージョンについてまとめときます。
前バージョンからの強化内容をざっくりまとめると以下のようになるかと思います。
最初から買い切り永久ライセンスのみの構成で買えるのが主要なDWG互換CADでは、BricsCAD のみとなってしまいましたが、来年は円安、プーチン不況などの影響がCAD企業にも出てくると思いますので、お金のない人は早めに買っとくといいと思います。COVID-19で使いまくった予算を埋めるための増税なども各所であるでしょうし。
BricsCAD V23(2022年10月リリース)日本語版は11月
- インターフェスが更新されて、モダンタイプと AutoCAD Civil3D 的な感じの Civil とコミコミの Complete のワークスペースが追加された。
- AI ドリブンな仕組みで次のおすすめコマンドを出してくれるようになった。(最初に表示はちょっとログ溜まってからっぽい。)
- 主に見てくれ設定用のインターフェス設定用のコマンドが追加された。(ダーク↔ライト、リボン↔ツールバー切り替えとかが楽にできる。)
- コマンドライン版しかなかったコマンド類がかなりダイアログ&パネル化されてAutoCADから移行する際のフラストレーションが減り、使い勝手が向上した。名前削除、図面修復管理、整列etc.
- エクスプレスツールが標準搭載になった。Liteでも使える!
- TIPSパネルが大分充実して初心者に優しくなった。
- 投げ縄選択対応。
- 図面の健康診断的機能が追加された。(ファイルサイズの)ダイエットとか、(異常なデータを除去する)がん治療的なことをまとめてできる。
- 自動化系機能が強化されてる。
- ツールパレットの構成が新しくなってる。(便利機能が使いやすくなってる。)
- AutoCAD Mechanicalデータの対応がかなり進んだ。(未対応のオブジェクトもあるけどよく使う系は概ね認識できてる。)(Mechanical)
- AutoCAD Mechanical の2D機械系コマンドが搭載された。パワー寸法、表面性状、溶接記号、データム、etc。(Mechanical)
- ダイナミックブロックとパラメトリックブロックの取り回し強化系機能が追加。
- はぐれた図形を削除するコマンドが追加された。(20年前に欲しかったやつ!)
- 3Dデータ系対応強化は今回のバージョンでも全方位的に行われてる。
- BIMで平面編集するための機能や、Revitファミリファイルの対応が強化。
- TINサーフェスの取り回し強化で。
- 点群の表現方法強化。
- MAP系コマンドの搭載。ESRI対応とか。
- もろもろで、コマンドが約80個も増えてる。
- 不具合修正がしこたま。レアケース比率が高くなってるので、安定度は増してきてると思われ。
- GUI の WXWidgets から QT 移行がかなり進んでる。
IJCAD 2022(2022年2月リリース)
- 印刷の透過性対応改善
- レイアウトモデル変換の改善 ← やっとまともになった。
- マルチラインがトリムに対応
- 寸法再割当て コマンドの追加(LT/STD/PRO)
- 寸法位置更新 コマンドの追加(LT/STD/PRO)
- 画層表示順序 コマンドの追加(STD/PRO)
- 基点変更 コマンドの追加(LT/STD/PRO)
- グループ編集 コマンドの追加(LT/STD/PRO)
- FS コマンドの追加(STD/PRO)
- ロック画層全解除 コマンドの追加(LT/STD/PRO)
- SDI 対応(LT/STD/PRO)
で、それぞれ細かい所の雑感。
BricsCAD
まず、Bricsys社の日本ブランチができて代理店オンリーではなくなって日本向けの対応が強化されてます。 note.bricsys.com での情報提供も始まってます。
V23は 2D系機能の強化が多めで AutoCAD と機能の実態として開きのあった部分にかなり手が入ってます。ダイアログ化された多数のコマンドは、単純に追いつくだけじゃなく独自のオプションなども盛り込まれていたりするので使い出があります。
ダイナミックブロックからパラメトリックブロックへの置き換えの流れを推進する機能が追加されている点はV21からの方向性として粛々と進んでる感じです。V22中のアップデートでも結構な強化がなされているので開発への投資が多めのスタンスは堅持されてます。
BricsCAD のメカニカルは、Solidworks や Inventor などの3DメカCADに近い機能を持った製品ですが、今回は予想外に AutoCAD メカニカル系の2D機械系のコマンドが追加されてきたので、ACM移行組は移行先候補に入れとけるかもしれません。
その他、細かすぎて伝わらない系の細々した改修は今回も積極的に行われていますね。ESRI対応とか AI系機能からの自動化・省力化の拡充など、DWGファイルを軸とした別ソフトという色合いがかなり強まってきていますが、BricsCADの上で設計は全部やるぜ!っていう方向も明確になったのは良い点かなと思います。
ACAD+Revit とか覚えんの(教育すんの)めんどいじゃんってことで。
細かな状況把握はリリースノートにまとまっているのでそれを見ればいいと思いますが、バージョンごとの主要な新機能と改善内容がうまいことまとまってたので引用しときます。
本国主催のイベントは終わってるので、もろもろの概要はそちらで見られます。
例年通り日本の代理店のオンラインイベントが11月後半にあるようなので英語に拒否反応がある人はそちらを見てみるといいでしょう。
例年通り日本の代理店のオンラインイベントが11月後半にあるようなので英語に拒否反応がある人はそちらを見てみるといいでしょう。
IJCAD
ほぼ新機能のない状態だった近年にしては新機能多めかもしれません。寸法再割当てコマンドなんかは 10年前に要望出してたわっていう感じです。機能面でまだ未対応な部分の大きいなところとしては、拘束系(ダイナミックブロック含む)、3D系(画角表示や光源、アニメーションなど)、マップ系(GEOなんちゃらのコマンド)、DB系になるかと思います。
3D系の機能は、基本的なところが弱すぎておまけレベルなのは変わらずです。
3D系の機能は、基本的なところが弱すぎておまけレベルなのは変わらずです。
まとめ
機能面では、BricsCAD=独自進化型(データ的にも)、IJCAD=ACAD 追従型(3Dはおまけ)で特に大きな変化はないですね。その他の互換CADもどうにか生き残ってますね。中華系CADは、国の方向性が危ういレベルになってきたので、万が一の際には影響を受けざるを得ないため選びにくくなってるかなと思います。
ライセンス周りでは、Bricsys は CEO発表として
「Bricsys はデータを箱庭に閉じ込めることは決してありません」そして「私たちは、最もアクセスしやすい最高のデザイン、モデリング、およびコラボレーション ソフトウェアを必要とするユーザーにサービスを提供するために、新しく柔軟なビジネス モデルを提供します。」
という方向性を明確に出したので、現行のライセンスバリエーションは当面は続けられそうです。対して IJCAD はライセンス再発行の実質有償化という、ライセンスの種類は変わってないけど永久ライセンスとは...的なサービスの改悪が目につきます。
で、個人的な話で食い扶持としての
2D CAD の仕事は去年で終わりにしてCAD界から離れてxR系に行くぜっていう予定だったのですが、ネクストジョブがなぜか某CAD企業になってしまったので人生何があるかわかりませんね。(^^;
ということで、このメモももうちょっと続くかもしれません。